基幹システムの“塩漬け”を防ぐ——担当者が代わっても回る仕組みづくり
作った人がいなくなり、誰も中身を触れない。

「作った人がいなくなり、誰も中身を触れない」。 長く使っている基幹システムで、この状態に悩む会社は少なくありません。毎日の受発注、請求、在庫、顧客管理は動いている。けれど、項目を1つ変えるだけでも不安がある。こうなると改善が止まり、現場はExcelや手作業で穴埋めを始めます。
この記事では、基幹システムの塩漬けを防ぎ、担当者が代わっても回る仕組みにするための進め方を整理します。
塩漬けの本当の原因は「中身が古い」だけではありません

塩漬けは、システムが古いから起きるとは限りません。多くの場合、問題は「なぜそうなっているか」が残っていないことです。
たとえば、受注画面に似た項目が2つある。片方を消したいが、過去にどの部署が使っていたか分からない。月末だけ動く処理があり、止めると請求に影響するかもしれない。こうした判断の根拠が担当者の頭の中だけにあると、退職や異動で一気に触れない仕組みになります。
前ベンダーに丸投げしていた場合も、同じ問題が起きやすくなります。納品物は残っていても、仕様を決めた経緯や現場との調整内容が社内に残っていないためです。
まずは「止まると困る業務」から棚卸しします
最初にやることは、全画面の調査ではありません。業務が止まると売上や入金に影響する部分から棚卸しします。
見るべき項目は、次の3つです。
- 毎日使う業務:受注、出荷、請求、在庫更新など
- 月末・月初だけ使う業務:締め処理、請求書発行、支払データ作成など
- 一人しか分からない業務:例外処理、手修正、取引先別の特別対応など
この棚卸しでは、きれいな設計書を作る必要はありません。「誰が」「いつ」「何を見て」「どこに入力しているか」を現場の言葉で書き出します。1業務あたりA4一枚でも、判断材料として十分に使えます。
全面刷新より、1機能ずつ安全に動かします
塩漬け状態を見ると、「全部作り直したほうが早い」と感じることがあります。ですが、基幹システムの全面刷新は、費用だけでなく業務停止のリスクも大きくなります。
特に中小〜中堅企業では、IT担当が兼任であることも多く、現場確認にかけられる時間が限られます。半年以上かけて大きく作り直す計画にすると、途中で担当者が変わったり、業務ルールが変わったりして、手戻りが増えます。
まずは1機能に絞るのが現実的です。たとえば、受注入力だけ、請求書出力だけ、在庫引当だけを対象にします。現行システムを動かしたまま、新しい処理を並行して試すと、現場への影響を抑えられます。
TaskBrainの支援でも、約240名規模の化学品商社で、受発注の二重入力を見直し、工数を50%削減した事例があります。大きな入れ替えの前に、入力箇所と確認作業を整理したことが効果につながりました。
属人化を防ぐには「操作手順」より「判断理由」を残します

マニュアルを作っても、塩漬けは防げないことがあります。操作手順だけでは、例外が起きたときに判断できないからです。
残すべきなのは、次のような情報です。
- この項目は何のためにあるのか
- 変更してはいけない処理はどこか
- 変更すると、どの部署や帳票に影響するか
- 過去に起きたトラブルと、その対処
- ベンダーや社内担当者が判断した理由
この情報があると、次の担当者は「触ってよい範囲」と「確認すべき相手」を把握できます。コードを読める人がいなくても、業務上の判断がしやすくなります。
外部に任せるなら、社内に知見が残る形にします
外部ベンダーに任せること自体は悪くありません。問題は、社内が判断に関われないまま進むことです。
丸投げにすると、納品後にまた同じ属人化が起きます。一方で、すべてを自社だけで抱えると、一人情シスや兼任担当者の負担が増えます。現実的なのは、外部が調査や設計、実装を支えながら、判断の根拠を社内担当者と一緒に残す進め方です。
会議では専門用語だけでなく、「この処理を変えると請求締めに影響します」「この帳票はA社との取引条件に関係しています」といった現場の言葉で確認します。そうすれば、役員会への説明にも使える材料が残ります。
最初の30日でやること
最初から大きな計画を作る必要はありません。まず30日で、次の順番に進めます。
- 止まると困る業務を3つ選ぶ
- それぞれの担当者、入力先、出力先を書き出す
- 一人しか分からない処理を確認する
- 変更が怖い箇所と、その理由をメモする
- 1機能だけ改善候補を決める
この5つがそろうと、「作り直すべきか」「一部改修で足りるか」「まず記録を残すべきか」が見えます。稟議でも、感覚ではなく数字と業務影響で説明しやすくなります。
担当者が代わっても回る状態を作るために
基幹システムの塩漬けを防ぐには、最新のツールを入れる前に、現場の業務と判断理由を見える形にする必要があります。作り直すかどうかは、その後に判断しても遅くありません。
TaskBrainは、2009年から15年以上、中小〜中堅企業の業務改善とシステム活用を支援してきました。支援実績は120社以上、従業員15名規模から1000名超の企業まで対応しています。現行システムの棚卸し、改修範囲の整理、社内に知見を残す進め方まで、伴走型で支援します。
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